機械学習を活用して秋軍団虫に立ち向かう:ウガンダからの挑戦
2016年、アフリカで初めて秋軍団虫(Fall Armyworm)が報告されました。この害虫は、アフリカ全土のトウモロコシ作物に深刻な被害をもたらしています。研究によると、秋軍団虫の影響により、地続きのトウモロコシの生産量は年に820万から2060万トンに及ぶことがあり、経済的損失は年に248万ドルから619万ドルに達する可能性があります。これは、年間予想生産量1159万ドルという状況の中で、大きな脅威となっています。
ウガンダの農業の重要性
ウガンダの経済の基盤は農業であり、人口の70%が農業に従事しています。農業は、ウガンダの輸出収益の半分、国内総生産(GDP)の4分の1を占めている要素です。こうした状況の中、秋軍団虫は私たちの生活に大きな脅威をもたらしています。
開発者たちの行動
ウガンダで活動する同じ志を持つ開発者たちが集まり、この問題への取り組みを決意しました。彼らの多くの親しい親戚がトウモロコシを栽培しているため、この問題は他人事ではありませんでした。グローバルな組織も、影響の大きさから革新者に解決策を求め、多くの支援の手が差し伸べられています。
機械学習の活用
彼らの目標は、地元の農家を支援するためのインテリジェントなエージェントを構築し、食料安全保障を高めることです。2018年5月、Google Developer Group(GDG)がウガンダのムバレで開催したスタディジャムやコードラボを通じて、TensorFlowを使用した機械学習に関する実践的な経験を積みました。この経験が「Farmers Companion」アプリの基礎を築くこととなりました。
データ収集の挑戦
チームは近隣の畑からトレーニングデータを収集し始めました。スマートフォンを使用して画像を撮影し、GDGのメンバーの協力を得ました。しかし、農家が町から遠く離れた場所に住んでいるため、多くの畑にアクセスするのが困難でした。特に、洪水の影響もありました。
さらに、彼らのスマートフォンが唯一の保存媒体であるため、1日に収集できる画像の枚数も限られていました。それでも、彼らは粘り強く取り組み続けました。
機械学習モデルの開発
収集した画像は1枚ずつ整理され、分類されました。彼らはTensorFlowを使用してMobileNetを再訓練し、転送学習の手法を活用しました。次に、TensorFlow Converterを使用してTensorFlow Lite FlatBufferファイルを生成し、Androidアプリに実装しました。最初は約3956枚の画像から始まりましたが、データセットは急速に成長しています。
TensorFlowの進化に伴い、KerasのハイレベルAPIによって深層学習のアプローチが簡単になり、今ではTensorFlow 2.0の実験も行っています。
アプリの使用法と利点
このアプリは使いやすく設計されています。ユーザーがアプリをインストールすると、カメラを通してトウモロコシの作物を焦点を合わせます。画像フレームが選択され、TensorFlow Liteを利用してその画像フレームが秋軍団虫による損傷を分析します。この結果に基づいて、可能な解決策の提案が行われます。
このアプリはダウンロード可能であり、常に更新が行われており、地元の農家に積極的に使用してもらうことを目指しています。彼らは「#ZeroHunger」の実現を目指し、技術がその実現に大きく貢献できると信じています。
今後の展望と目標
これまでにウガンダの国営テレビにも紹介され、#hackAgainstHungerや国連のフード農業機関が主催する「国際シンポジウム」で彼らの解決策が紹介されました。最近では、Googleによるプロジェクトの一環としても注目されています。
彼らはコーヒー病やキャッサバ病への対応を進めており、さらなる害虫や病気に対する解決策の拡大を目指しています。また、仮想現実を導入して、農家に良い農業慣行を示し、さまざまなトレーニングを実施しています。
今後の計画としては、さらなるデータ収集と解決策のスケーリングを行い、フィードバックを活用してモデルの質を向上させていく予定です。より高度なハードウェアと地域に特化した理解が得られれば、機械学習が飢餓との戦いにおいて大きな役割を果たす余地が広がります。